その贈与、本当に大丈夫?暦年贈与を実施する際の注意点をピックアップ


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  • その贈与、本当に大丈夫?暦年贈与を実施する際の注意点をピックアップ 2018-04-02



    皆様こんにちわ。
    京成不動産 資産活用サポート担当の渡邉です。

    今回は、生前贈与に関するコラムです。
    生前贈与は、相続税の節税対策の王道中の王道です。

    その中でも、いわゆる「暦年贈与」は実施されている方も多いのではないでしょうか。
    1人につき年間110万円までの贈与は相続税が非課税(暦年課税)であり、その非課税枠内での贈与を毎年実施する、という贈与の仕方を通称「暦年贈与」をいいます。

    しかしこの暦年贈与、ひとつやり方を間違えると全く効果がなくなります。
    今回は、暦年贈与の失敗例から、注意すべき点をご紹介いたします。


    1、最も多い失敗「名義預金」

    暦年贈与が認められるためには、渡す側ともらう側の合意が必要です。
    贈与する側が「あげた」と思っていても、贈与を受ける側が「もらった」と思っていない状態では、贈与は認められないのです。

    良くありがちなのが、祖父が孫のために孫名義で銀行口座に貯金していた定期預金。
    印鑑も通帳も祖父の手元にあり、孫はその口座の存在も知りません。
    そのまま祖父が亡くなってしまうと、この預金は孫のものにはならず、相続財産となり、相続税の課税対象となってしまいます。
    これが、いわゆる「名義預金」の正体です。
    (遺言があれば孫に預金を遺贈をすることは可能ですが、相続税の課税対象になることは避けられませんし、孫への遺贈の場合相続税は2割増額します)

    本人は贈与をしたつもりでも、贈与と認められない名義預金。
    せっかくの対策が無意味にならないためにも、贈与をする際には、下記の点に注意しましょう。

    ①通帳や印鑑、銀行のキャッシュカードは相手に渡しておく
    ②銀行振込や振替で、贈与をした事の証拠を残す
    ③贈与契約書を残す


    仮に口座の印鑑が贈与者のものであることが判明したら、名義預金と疑われ、贈与が認められない危険性があります。
    通帳、印鑑は必ず受贈者が管理をするようにしましょう。
    ただし、110万円以上の預金がされている口座の通帳と印鑑を渡してしまうと、その場で預金額を一括贈与したとみなされ、贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。
    そのような場合は、あらかじめ預金額を減らしておいたり、受贈者に新たに口座を作らせるなどの対策をしましょう。

    なお、受贈者の無駄遣いが心配な方には、生命保険を組み合わせた方法もあります。
    詳しくはこちら↓
    コラム:知っていますか?生命保険と相続対策の深い関係①


    2、「定期贈与」とみなされないための注意

    きちんと受贈者との合意を形成し、証拠を残したとしても、まだ安心はできません。
    「定期贈与」とみなされてしまうと、贈与税の課税対象となってしまいます。

    定期贈与とは、一定金額の贈与を、一定期間で分割して贈与するというもの。

    例えば、年100万円ずつ、10年間にわたって計1,000万円を贈与した場合、定期贈与だとみなされる危険性があります。
    定期贈与とみなされた場合、合計額の1,000万円に大して贈与税が発生してしまいます。

    そうならないためにも、以下の点に注意しましょう。

    ①毎年贈与額を変える
    ②必ず贈与契約書を作成する


    毎年の贈与の証拠を契約書で残すことは、「定期贈与」とみなされる事を避けるための有効な手段です。
    名義預金とみなされないための対策も兼ねることができますので、必ず取り入れてください。
    書式については特段の定めはありませんが、日付と署名だけは自署で残すことおすすめします。
    自身での作成が不安な方は、一度ご相談いただければと思います。


    3、見落としがちな「夫婦間での贈与」

    上記の対策を行うことで、被相続人から推定相続人への贈与については対策ができたといえます。

    しかしこの贈与について、1点見落としがちな点があります。
    それが、「夫婦間での贈与」です。

    たとえば、夫婦のうちのどちらかが会社に勤めており、どちらかが専業主婦(主夫)だったとします。
    そのようなケースでも、家計は同一のため、お給料は二人で共有しているものと考えられます。

    ただし、税務上での考え方はそうではないのです。

    たとえば、預金の管理を担当している主婦(主夫)の名義で作られた口座に多額の預金が入っていた場合。
    その預金は勤め人である配偶者のお給料である可能性が高く、税務上は配偶者固有の財産とみなされます。

    その状態で配偶者が亡くなった場合、その預金は相続財産とみなされ、相続税が課される可能性があります。
    預金に関しては夫婦のどちらもが自由に使え、共有状態だったという認識があったとしても、税務上は上記のような扱いになります。
    通常の感覚と乖離があるため、相続対策の際にも見落とされがちなポイントです。

    夫婦で一定以上の金融資産があり、相続税の課税が懸念される場合には、夫婦間でも贈与を実施するなどの対策が必要になるのです。


    4、まとめ

    いかがでしたでしょうか。
    「毎年110万円以内の贈与をする」という一見シンプルな節税対策ですが、

    リスクが低く、かつ確実な節税効果を狙える暦年贈与。
    注意点さえ気をつけて、手順を守って実施すれば問題はありませんので、是非早いうちから取り組んでいただければと思います。


    ページ作成日 2018-04-02