長年連れ添ったご夫婦への特典「おしどり贈与」 その効果の程は?


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  • 長年連れ添ったご夫婦への特典「おしどり贈与」 その効果の程は? 2018-06-17


    税制において、配偶者への特典というものは数多くあります。
    贈与においても例外ではなく、「おしどり贈与」も特典のひとつです。
    今回は、「おしどり贈与」に関するコラムです。


    1、おしどり贈与とは

    「おしどり贈与」は、正式名称を「配偶者への居住用不動産の贈与の特例」といいます。
    非常に長い上に内容の説明としては片手落ちな名称なので、通称として「おしどり贈与」という名称が用いられる事が多いです。

    この制度は、婚姻期間が20年以上の配偶者へ居住用不動産、または居住用不動産を取得するための資金を贈与する場合、2,000万円を課税価格から控除できるというもの。
    「居住用不動産の贈与」のみならず、その取得資金も控除の対象になります。
    暦年課税の110万円の控除が残っていれば、合算して2,110万円まで控除可能です。

    この特例を利用した贈与は、相続前3年以内に実施したものであっても相続財産に取り込まれることはありません。



    2、効果の程は・・・?

    贈与により相続財産を減少させることで、相続税の減額効果が得られます。
    その効果はどの程度のものなのでしょうか。

    実を言うと、居住用不動産そのものを贈与した場合、2,000万円分の効果を享受できるわけではないのです。
    自宅敷地は小規模宅地等の特例により、相続税の計算の際にはし空こうで80%評価額が減額されます。
    そのため、実際には贈与額の20%しか効果がないことになります。
    登記費用や専門家への報酬などを考えると、節税効果よりもコストの方が多くなってしまう事すらありえます。

    自宅の他に賃貸物件等を所有し、そちらに小規模宅地等の特例を適用する予定であれば、不動産の贈与であっても十分な効果が得られます。
    また、配偶者の居住用不動産取得資金を現金で贈与する場合にも、十分な効果を得ることができるでしょう。

    また、相続に依らず配偶者の居住地を確保したいなど、税金以外に関する目的であれば、利用するメリットはあります。
    (民法の改正により配偶者の居住権が保証されるようになると、上記のケースでも贈与の実施は不要ということになりそうですが・・・)


    3、制度を利用する際の注意点

    本制度を利用する際は、ご夫婦のどちらが先に亡くなっても問題無い様に手当てをしておく必要があります。

    例えば自分が先に亡くなると決めつけて、配偶者へ自宅不動産を贈与した場合。
    もし配偶者が先に亡くなってしまうと、家族構成次第では自宅不動産が配偶者側の親族と共有になってしまう可能性があります。
    お互いに遺言を書いておくなど、どちらが先になくなっても所有権が遺された方に集約される様、手当てをしておくようにしましょう。



     


    ページ作成日 2018-06-17