不動産は一つ、相続人は二人。保険を用いた代償分割について考える


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  • 不動産は一つ、相続人は二人。保険を用いた代償分割について考える 2018-07-16

    不動産と相続対策は切っても切れない関係です。
    不動産に関する相続対策というと節税対策を意識される方が多いかと思いますが、相続トラブルを回避するためにもっと大切なのが「納税」対策と、「分割」対策です。

    分割対策が必要なケースとは、例えば下記の様なケースが考えられます。
    母の相続が発生した際に、相続財産として考えられるものは、自宅不動産と若干の金融資産のみ。
    推定相続人は、2人の子供たち。
    なんら分割対策を講じないまま相続が発生した場合、子2人でこの不動産をどのように分割するのか協議することとなります。

    分割の方法としては、例えば不動産を売却し、現金で分割をするという方法が考えられます。


    不動産の分割が難しいと言われる理由の一つに、価値が定量的に判定しにくいというものがあります。
    不動産の価値は相続税評価額、固定資産税評価額、実際に取引される価格(マーケット価格)など多岐に渡り、分割方法をめぐってトラブルの火種になる事があります。
    換金化し、現金を分割する事は、資産的な意味で平等な分割を実現するという意味では非常に明確。
    子供たちが既にそれぞれの住居を持ち、今後当該不動産が空き家になることが確実であれば、有効といえるでしょう。

    しかし、子供たちのどちらかが相続不動産で親と同居をしていたり、売却ができない事情があった場合、上記の分割方法は採れません。

    そんな時に採れる分割方法がもう一つあります。
    それが「代償弁済」といわれる方法です。


    代償弁済とは、相続財産を受け取る相続人が、相続財産に相当する相続人個人の財産を、別の相続人へ給付すると言うもの。
    図解すると下記のようになります。

    まず、実家の不動産を長男が相続。


    その後長男から次男へ、相続した不動産の価値に相当する額の財産を次男へ渡す。


    これにより、不動産を売却することなく、お互いに経済的な利益を享受できることになります。
    ただし、これには注意点があります。
    要件を抑えておかなければ、贈与税が課されてしまう可能性があります。

    まず1点目の要件として、代償分割をするものが相続財産を受け取っていること。
    当然といえば当然と言えます。上の図で、長男が不動産を受け取っていないにもかかわらず次男に現金を渡していたら、どこからどうみてもただの贈与ですね。

    もう1点の要件があります。それは、渡す財産の額が相続した積極財産の額を上回らないこと。
    これも当然ですね。例えば相続人が母と子の2人で、母にも相続税の課税対象になる規模の固有財産がある場合、上記の要件がなければ相続税対策として多額の財産を無税で子に移転させる事もできてしまいます。


    代償分割の方法についてはおおよそご理解いただけたかと思います。
    しかし実際に代償分割による対策を検討した際に、クリアすべきハードルがあります。
    それは、相続財産を受けとるほうが、代償財産を所有しているかどうか。

    そもそも代償財産を給付することができないのであればこの話は絵に描いた餅になってしまいます。

    そこで使われるのが保険です。
    生命保険は相続発生時に現金が受取人に支払われるため、納税対策等で取り入れられる事があります。
    また、保険金は原則相続財産とはならず、即時受取人の固有財産となります(税務上の計算では相続財産とみなされます)。
    これらの性質を利用し、代償分割の支払い原資を用意します。


    保険を用いた相続対策をする際には、保険商品の種類や保険金の契約者、受取人当について良く検討をしなければ、税務上の損をする場合や、相続対策にならないケースもあります。
    必ず相続に強い保険の専門家に相談をしてから実行するようにしてください。

     


    ページ作成日 2018-07-16