中小企業の経営者の引退年齢は、会社の規模や業種にもよりますが、平均すると67歳~ 70歳。現在の経営者の年齢分布の山が66歳となっていることを踏まえると、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えると予想されます。
では、 その中小企業の経営者の方が何も対策をしないでいる間に、 そのまま亡くなってしまい相続が発生したらどうなるのでしょうか?不動産、借入れのための担保、会社への貸付金、自社株等々……経営者の方々の相続は一般の方より、はるかに複雑になります。
1.事業用の不動産を個人名義で所有している場合
事業用不動産は会社継続において不可欠ですが、社長名義の不動産を会社が使用しているケースは多くあります。
ここで社長が亡くなり相続が発生した場合に、後継者の方がその土地すべてを取得せず、 他の相続人の方と共有となったり、後継者以外の方が相続してしまったりするとその上の建物(たとえ会社名義でも)に対して、土地の所有者に権利があるために、土地の買い取り請求、賃料をめぐってのトラブル、最悪の場合は立ち退きということもあり得ます。
2.自宅に担保権を設定している場合
会社の借入れの担保として、社長の自宅や土地に抵当がついていた場合、抵当権付きの自宅としてひきつがれます。 当然、抵当権付きの自宅を誰がひきつぐかの問題も起きますが、 会社の業績が悪くなった場合、金融機関は債権回収をおこなう可能性があります。
最悪の場合、ひきついだ自宅を手放さなければならないケースもあります。
3.社長が会社にお金を貸している場合
相続において、他人に貸しているお金も相続財産にプラスしなければなりませんが、社長がその経営している会社にお金を貸している場合も同様に相続財産となります。
社長の懐から会社に貸して精算せずにそのままになっているケースはよくあることですが、これはそれまで精算していないだけあって現金化が難しく、書類上の金額でしかありません。
後継者の方が引き継いだらそのままにしておくでしょうが、後継者以外の経営に無関係な方が相続した場合、会社が返済請求をうける可能性があります。
4.自社株の評価が不明な場合
預貯金や不動産を大きく上回り、財産の大部分が自社株である、ということも十分にありえます。 当然、会社経営と関係のない人には価値がないものですし、もし後継者以外の人が相続したり、株が分散したりすると会社の経営基盤が危なくなってくるので、やはり後継者の方に集めなければなりません。
ただ、この自社株の評価額を把握しておかないと、相続がおきてから算定してみたら予想の数倍になっていて相続税の支払いさえできないという状況も十分あります。
解決方法はそれぞれのケースごとに違いますが、このような最悪の事態を避けるために、経営者の方は元気なうちに事業承継対策をする必要があります。
この元気なうちに、というのが重要です。
遅くなればなるほど、体調不安が出てきたり、判断能力が衰えてきたりして、親族間はもちろん、会社内や取引先、融資先の信用が落ちてきます。
一般的に後継者の育成期間を含めれば、事業承継には5年~10年を要する長期プロジェクトです。中小企業がこれまでの経営基盤を損なわないように、事業承継に向けた取組をスムーズに進めることが、経営者と後継者のみならず、日本のこれからを左右する重要な課題なのです。
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ページ作成日 2019-04-15