土地の課税対象額を減らそう ~相続資産圧縮対策の基本 その1~


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  • 土地の課税対象額を減らそう ~相続資産圧縮対策の基本 その1~ 2017-04-24

    こんにちは、資産活用サポート担当の渡邉です。 

    今回から、相続資産の圧縮対策の基礎的なテクニックを紹介していきます。 
    全3回を予定しております。 
    多くのテクニックをご紹介しますので、取り入れられる部分から検討していただければと思います。 

    さて、「相続資産の圧縮対策」は、大きく以下の3つに分けられます。 

    A、相続税の課税対象額を減らす 
    B、相続資産のうちで非課税枠・控除額を増やす 
    C、相続発生までに相続資産を減らす 

    この中から今回は、A、相続税の課税対象額を減らすを見ていきたいと思います。 


    A、相続税の課税対象額を減らす 
    主に土地の評価減効果を利用する施策です。この施策は大きく3つに分けられます 。

    1、小規模宅地等の特例の活用 
    2、土地の評価方法の見直し 
    3、不動産活用をする事による評価額の圧縮 


    1、小規模宅地等の特例の活用 

    小規模宅地等の特例(自宅や事業用の土地に対して相続税評価額が大幅に圧縮される特例)を活用して、課税対象額を減らす方法です。 

    この特例を使えば、亡くなった方(被相続人)や生活を共にする家族(同一生計親族)の事業用や居住用の宅地について、一定の要件を満たした場合にその宅地の評価額を80%減額することができます。 
    たとえば1億円の価値がある宅地でも、2,000万円で税金計算することができます。
     
    この制度を利用するためには、被相続人が相続人と同居している必要があるなど、取得者ごとの要件がありますので、適用を受けたい方はよく確認をしておく必要があります。
    特に小規模宅地を得意とする税理士の方もいらっしゃいますので、自身での判断が難しい場合には専門家に相談してみてください。 

    また、適用面積にも要件があるので、どの土地にこの特例を適用させるべきか検討する必要があります。 

    また、たとえば路線価が低い土地から、路線価が高い土地に買い換えれば、同じ金額でも面積が狭くなるので、特例の面積上限を超えてしまう場合は効果的なテクニックと言えます。 



    2、土地の評価方法の見直し 

    土地は「土地の分割方法の工夫」「土地の利用区分の見直し」「土地の相続税評価後の補正」をすることで、相続税評価額を減らすことができます。 

    「土地の分割方法の工夫」では、土地を分割することにより、「低い路線化で評価される土地を作り出すこと」「評価額が低くなるような土地の形状にすること」で相続税評価額を圧縮します。 
    たとえば、土地が2つの道路に面している場合は、分割によって片方の土地を路線価が低いほうで評価されるようにします。 

    また、分割によって片方の土地を不整形地にすると、相続税評価のときに補正地を掛けて、小額ではありますが評価を減額できるので、これを利用して相続税評価額を圧縮します。 
    このように分割した土地でも、相続後に同時に売却することができれば、売却価格は下がりません。 

    「土地の利用区分の見直し」は、自家用地よりも貸家建付地の評価が低いことを利用した相続税評価額の圧縮方法です。 
    駐車場は自家用地として評価されますが、アパートの住人のための駐車場は貸家建付地の評価を適用できます。 
    このため、アパートの住人用とそれ以外に駐車場を分けることができれば、相続税評価額が圧縮できます。 

    「土地の相続税評価額の補正」は、先ほど少し触れましたが相続税評価の時に補正値を掛けることで、相続税評価額を下げることができることを使った資産の圧縮方法です。 
    例えば、奥行きが長かったり、間口が狭かったりする場合は減額要件となります。 

    相続税評価は、相続人側が評価をすることになっているので、補正せずに申告した場合は余計に相続税を支払うことになります。 
    よって、税理士の中でも特に資産税に強い税理士に依頼をする事が、節税の一番の近道と言えます。



    3、不動産活用することによる評価額の圧縮 

    不動産の相続税評価額は、現金よりも低いという点と、賃貸不動産は自家用不動産よりも相続税評価額が低いという点を利用した圧縮方法です。 

    建物は、相続税評価の時には固定資産税評価額で評価されます。 
    固定資産税評価額の時価に対する評価の割合は構造によって違い、目安としては木造・軽量鉄骨造50%、重量鉄骨造55%、RC造60%です。 

    つまり、木造の建物を建てた場合、その建物は建てるのにかかった金額(=時価)で評価されるわけではなく、時価の50%程度の金額である固定資産税評価額で評価されるのです。 

    さらに、建物完成時から時間がたてば、減価償却費分だけ固定資産税は少なくなっていきます。 

    賃貸用の建物であれば、固定資産税評価額からさらに借家権の割合を引くことができます。 
    借家権は賃貸物件に住んでいる人の権利なので、その分を所有者の評価額から引くことができるのです。 
    借家権は、現在は一律30%で設定されています。 

    土地の相続税評価では、公示地価(≒時価)の概ね80%程度の水準で設定されている路線化を使うので、現金を土地に変えるだけで評価額を20%圧縮することができます。 

    さらに、土地に賃貸用の建物が建っていれば、土地の評価は貸家建付地評価となり、借家権と借地権を掛けた割合分だけ土地の評価額を下げることができます。 

    収益物件を購入すれば、建物と土地の評価減効果を同時に受ける事ができます。 

    ただし、賃貸用の建物を建てる場合や、収益物件を購入する場合は、相続税評価額の圧縮効果だけでなく、収益性も良く検討しないと資産を大きく減らすことになるので、注意してください。 
    また、賃貸物件は賃料収入を生むので、当然、相続資産は増えていきます。 
    このため、次回以降にご紹介する「相続発生までに相続資産を減らす」も検討してください。 


    ちなみに、一時期非課税財産の圧縮対策として取り上げられていた「金の仏具」ですが、こちらは節税効果を期待することは難しいとされています。 

    仏具などの「祭祀財産」は確かに非課税なので一見理にかなっているように見えるのですが、「祭祀財産」として認められるためには、税務署に認められる必要があります。 
    しかしながら、過度に高額な商品や、投資・骨董目的の場合は「祭祀財産」とみなされずに課税されてしまいます。 
    例えば数千万円もする仏像などは、まず「祭祀財産」とは認められないでしょう。 

    また仏具の場合、売却時に加工賃が加味されないこともあり、購入金額よりも売却金額が安くなるケースがほとんど。 
    逆に損をしてしまうということもありえます。 
    購入を検討する場合は、節税対策ではなく故人への想いや、仏具そのものの美しさで購入を検討をしてください。



     


    ページ作成日 2017-04-24