自宅(不動産)の売却に最適なタイミングは?~相続の前後どちらを選ぶ?~


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  • 自宅(不動産)の売却に最適なタイミングは?~相続の前後どちらを選ぶ?~ 2018-02-12

    皆さんこんにちわ。
    京成不動産の渡邉です。

    今回は、自宅不動産の最適な売却時期に関するコラムです。
    「自宅不動産」は税務上様々な特例が絡み合う、特殊な資産です。
    自分が亡くなったあと誰も住むことが無い自宅不動産を売却しようと考えたとき、いつ売却するのがベストか?
    本日は、その判断に関係する税務上の特例をご紹介します。



    1、【相続前に売却】自宅不動産売却の3,000万円控除

    不動産を売却したときに「儲け」が出た場合、そこに税金がかかります。
    たとえば、1,000万円で購入した不動産が3,000万円で売却できた場合、2,000万円の「儲け」が出ます。
    この2,000万円から更に仲介手数料など売却費用を差し引いた金額に税率を掛け合わせた額が、譲渡所得税として課されるのです。

    しかし売却する不動産が「自宅」の場合、税務上の特例があります。
    それが「居住用不動産の3,000万円特別控除の特例」です。

    たとえば、1,000万円で購入した不動産が3,000万円で売却できた場合、2,000万円の「儲け」が出ます。
    しかしこの不動産が自宅であれば、この2,000万円の儲けから3,000万円を差し引く事ができます。
    2,000万円-3,000万円=-1,000万円なので、この場合譲渡所得税はかかりません。

    自宅不動産を売却する際には、このような特例があります。
    5年以上所有した不動産を売却する際の譲渡所得税率は約20%なので、上記のケースでは自宅か自宅じゃないかで400万円の差が出る計算になります。


    2、【相続後に売却】小規模宅地の特例

    それでは、引き継ぐ人のいない自宅不動産は、相続前に売却する方が良いのでしょうか?

    一概にはそうは言い切れません。
    なぜなら、相続税の計算時に使える「小規模宅地の特例」というものがあるためです。

    小規模宅地の特例とは、相続税の計算をするときに、自宅不動産の敷地は評価額を8割引で計算してよいという特例です。
    その効果は非常に大きく、相続税評価額が3,000万円の土地であれば、600万円の土地として計算されます。
    生前に自宅不動産を売却し、現金化していた場合、その相続税評価額は額面どおりの金額になります。

    ただしこの特例を使うためには、自宅である以外にも条件があります。
    それは、不動産を相続する側の条件です。

    両親が亡くなり、実家を相続したAさんの場合。
    Aさんが既に持ち家を所有しており、相続した実家に引っ越す事が無い場合、小規模宅地の特例は使えません。

    次に両親が亡くなり、実家を相続したBさんの場合。
    Bさんのご自宅は持ち家ではなく賃貸マンションであり、相続した実家に引っ越す事が無かったとしても、小規模宅地の特例が適用可能です。

    相続する側の親族が持ち家を持っているか否かで、適用可能かどうかが変わります。
    この点については、下記の記事にも詳しく記載しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。
    平成30年税制改正を読み解く① 小規模宅地の特例 適用範囲の厳格化・・・持ち家無き子偽装にメス

    この小規模宅地の特例が適用できる場合、相続後の売却の方が有利なケースが多く見受けられます。
    所得税よりも相続税の方が影響は大きいためです。


    3、【相続後に売却】被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

    また、相続後に自宅が空き屋となり、相続人が売却を実施した場合にも使える特別控除があります。
    それが被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例です。
    長ったらしい名前なので、「空き家の3000万円特別控除」などと表現されます。

    しかしこの特例を適用するためには厳しい条件があります。
    まず昭和56年5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物でなければ、この特例は使えません。
    また相続してから売却までに賃貸に出されていたり、売却価格が1億円を超えてしまってもこの特例は使えません。

    また建物が一定の耐震基準を満たすか、解体して更地で売却するかの場合でなければ、この特例は使えません。

    他にも適用するための条件がいくつもあり、適用可能な不動産は限られますので、判断に迷う場合はご相談いただければと思います。


    4、【相続後の売却】相続税の取得費加算

    小規模宅地の特例も空き家の3,000万円特別控除も使えない・・・・
    そんな方でもまだ使える特例があります。
    それが相続税の取得費加算の特例です。

    たとえば、Aさんが相続した自宅を3,000万円で売却した場合。
    その自宅は両親が1,000万円で購入しており、2,000万円の儲けが出ます。
    本来ならば、この2,000万円に税率を掛けた譲渡所得税が課されます。

    しかしAさんは、この相続の際に相続税を500万円支払っていました。
    相続した財産の内、自宅不動産が占める割合は1/2です。

    この場合、相続税500万円×1/2=250万円を、自宅不動産を購入した金額1,000万円に加算することができます。
    これが相続税の取得費加算です。

    自宅不動産を購入した金額が1,250万円になったので、儲けは1,750万円となります。

    この相続税の取得費加算を使うための条件は、相続税を支払った人が相続した財産を売却することと、亡くなった日から3年10ヶ月以内に売却することです。


    5、【まとめ】自宅はいつ売ればいいのか

    今回は自宅にまつわる4つの特例をご紹介させていただきました。
    売却時期に迷った場合、まずこの4つの特例のうちどれが使えるのかを検討します。
    そして複数の特例が使える場合、どの組み合わせがもっとも効果が大きいのか計算が必要になるため、税理士に判断を仰ぎます。

    不動産の売却は、ちょっとしたタイミングの違いで大きく手取り額が変わってしまう可能性があります。
    方針を迷われている方は、是非一度ご相談いただければと思います。
    顧問税理士と連携の上、プランニングをさせていただきます。


    ページ作成日 2018-02-12