平成30年税制改正を読み解く① 小規模宅地の特例 適用範囲の厳格化・・・持ち家無き子偽装にメス


不動産・相続コラムの一覧へ戻る
  • 平成30年税制改正を読み解く① 小規模宅地の特例 適用範囲の厳格化・・・持ち家無き子偽装にメス 2018-01-08

    皆さんこんにちわ。
    京成不動産 資産活用サポート担当の渡邉です。

    昨年末、政府与党から平成30年税制改正大綱が公表されました。
    その内容の中には、不動産の相続に関連する項目も複数盛り込まれていました。
    これから数回にわけて、平成30年度の税制改正のなかから、特に不動産・相続に関連が深いと思われるものをピックアップしてご紹介します。
    今回は、小規模宅地の特例の改正についてご紹介します。

    1、小規模宅地の特例の改正

    小規模宅地等の特例とは、亡くなった人の自宅を相続する際に、土地の評価額が8割減になる(面積上限あり)という制度です。
    この制度を利用するためには、相続する人にも要件があります。

    ①亡くなった人の配偶者
    ②同居していた親族
    ③持ち家の無い亡くなった人の子供


    のどれかに該当する必要があります。
    今回改正されるのが、これらの要件のうち「持ち家の無い子供」の部分です。


    2、一時的に「持ち家の無い子供」になる節税対策

    「持ち家の無い子供」には、下記の条件があります。
    ○ 相続人本人だけでなくその配偶者の持ち家にも住んでいないこと
    ○ 持ち家に住んでいない期間は被相続人が亡くなる前3年間を超えること

     
    これまでは、配偶者も同居親族もいない場合、既に持ち家を所有している子供が「持ち家の無い子供」を装うという節税対策が可能でした。
    例えば持ち家を贈与などで親族や自社に名義を変更し、自身は他人名義の家に住んでいる事にすれば、小規模宅地の特例が利用可能になります。
    移転コストがかかったとしても、評価が8割減になる効果は非常に大きく、一定以上の資産を持つ方にとっては有効な節税対策方法でした。


    3、「家なき子」を装う対策にメス

    しかし平成30年の税制改正で、上記の相続税対策に待ったがかかりました。


    平成30年税制改正大綱

    持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者を除外する。
    イ 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
    ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者


    先述の、一次的に所有者では無くなる相続税対策を防ぐための改正です。
    3年以内に所有していたらアウトから、3年以内に住んでいたら(名義が違っても)アウトに変更。
    親族や法人に名義移しても、引き続き居住している場合は小規模宅地の適用はできません。
    名義を変えて3年を超えても、相続時に住んでいたらアウト。
    名義を変えて、実際に引越しもして、3年を超えて、初めて「家なき子」です。

    この改正は平成30年4月1日より適用されます。
    変更により小規模宅地の適用者では無くなる方、将来的に上記の対策を検討していた方は、改めて相続税の試算をする必要がありそうです。


    ページ作成日 2018-01-08