法制審議会による民法改正案① 相続発生後の配偶者の住宅を確保「居住権」とは


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  • 法制審議会による民法改正案① 相続発生後の配偶者の住宅を確保「居住権」とは 2018-01-30

    皆さんこんにちわ。
    京成不動産の渡邉です。

    法務大臣の諮問に応じて,法務に関する基本的な事項を調査審議を行う「法制審議会」相続部会は16日、
    故人の配偶者が住まいや生活費を確保しやすくなることを柱とした民法の改正要綱案をまとめました。

    論点は大きく2つ。
    配偶者が相続後も住居に住み続ける権利の新設と、法定相続人以外の親族が介護に携わった場合の寄与分の取り扱いです。
    今回は、「配偶者の住居確保」に関する改正案をご紹介します。
    ※今回ご紹介する内容はあくまでも案の段階であり、今後の改正内容を保証するものではありません



    以下は改正案からの抜粋です

    2 配偶者の居住権を長期的に保護するための方策

    配偶者の居住権を長期的に保護するための方策として,次のような規律を設
    けるものとする。

    (1)長期居住権の内容,成立要件等

    ア 配偶者は,被相続人の財産に属した建物を相続開始の時に居住の用に供していた場合において,次のいずれかに掲げるときは,その居住の用に供していた建物(以下2において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下「長期居住権」という。)を取得する
    (注1)。ただし,被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては,この限りでない。
    (ア) 遺産の分割によって長期居住権を取得するものとされたとき。
    (イ) 長期居住権が遺贈の目的とされたとき。
    (ウ) 被相続人と配偶者との間に,配偶者に長期居住権を取得させる旨の死因贈与契約があるとき。

    イ 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は,次に掲げる場合に限り,ア(ア)の審判をすることができる。
    (ア) 共同相続人間に配偶者が長期居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
    (イ) 配偶者が家庭裁判所に対して長期居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において,居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき。

    ウ 長期居住権の存続期間は,その定めがないときは,配偶者の終身の間とする。

    エ 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても,他の者がその共有持分を有するときは,長期居住権は,消滅しない。



    従来は不動産に居住する権利は、「所有権」の中に含まれていました。
    今回の改正案では、「所有権」から「居住権」を分離させ、単独で取り扱う事を可能にする事を提案されています。
    所有権自体は共有で相続させ、居住権のみを配偶者へ遺贈するといった事を可能にします。
    また配偶者が長期居住権を得られず、住宅が別人に帰属する場合、6ヶ月間は引き続き居住可能とする「短期居住権」も設定されています。

    長期居住権は原則配偶者の終身の間保証されます
    この改正案が採用された場合、たとえば節税を目的としない、配偶者の住居確保のためのおしどり贈与は必要がなくなります。

    法務省は、22日開会の通常国会に民法改正案を提出。
    本改正が可決した場合、相続対策、特に分割対策に大きな影響があります。
    今後も動向に注目していきたいと思います。

    今回の改正案の全文はこちらから→法務省ホームページ


    ページ作成日 2018-01-30